カール・ポパーの思想「歴史主義の貧困」を読んで
昨日のブログでも触れたが、日経新聞の黒田前日銀総裁の記事を見て知った「歴史主義の貧困」の要約をメモしてみた。
この本の主眼は、①人間の歴史の行く末を科学的方法により予測することはできない、②このことは理論物理学に対応する歴史の社会科学である理論歴史学が成立不可能であることを意味しているというもの。
カールポパーは、科学哲学の分野で「反証主義」を提唱した哲学者として知られている。「反証主義」とは、およそ反証され得ないような理論は科学的理論ではないというもの。
この反証主義からすれば、歴史主義者が主張する歴史法則や歴史的発展の理論(物事は一定の法則に従って歴史的に発展していくという考え方)などは、検証可能だとしても反証不能であり、科学的理論ではないということになる。
それではカール・ポパーは何故歴史主義を否定しようとしたのか。「歴史主義の貧困」の冒頭に次のような言葉が掲げられている。「歴史的運命の不変の法則というファシズム的、共産主義的信念の犠牲になったあらゆる信条の、あらゆる国の、あらゆる民族の無数の男たち、女たち、子供たちを偲んで」
ポパーは、自由で民主的な開かれた世界が確保されていることが重要であり、反証をおよそ許さないような全体主義、マルクス主義的思想を厳しく批判したことで知られている。歴史主義への批判は、この全体主義やマルクス主義への批判でもあった。