50代早期退職者tudanumax の日記

50代で早期退職しようと考えた理由、心境など

哲学上の難問(主客一致の問題)

 

 

 

早期退職後に大学の聴講生として通っている今日の哲学の授業は、哲学者カントの2回目。カントの哲学は難解であり、ボリュームもあることからシラバスでは4回にわたり講義が行われる予定になっている。

 

今日も頭をフル回転させて何とか授業についていった。

 

その授業に出てきた哲学上の難問の1つに、科学はなぜ客観的たり得るのか🟰主観はどうやって客観的世界に一致する知を獲得できるか(主客一致の問題)という問いがある。

 

科学法則は仮説を立てて、それを実験などで検証することで客観的に世界を捉えている。しかし、その実験結果を認識しているのはあくまで人間の主観。そうであれば、これまで自然科学が解明してきた法則の客観性も疑わしくなるのではないかとの問いが上記の問題。言い換えると、仮に一切の認識は主観に現れたものでしかないとすると、科学の知も主観的なものにすぎないのではないか。

 

 

カントは人間の認識の構造についての深い洞察をして、この難問に答えている。

 

カントによれば、人は、純粋に客観的な物を見て認識しているのではなく、まず五感で受け止めた印象を空間と時間という枠で捉え(これを「感性」という。)、次に受け止めた漠然たる感覚の束を整理統合し(これを「悟性」という。)、認識するに至る。いわば人は共通のメガネを備えており、これに基づいて物を認識しているとする。「認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う」とカントは言っている。

 

そして、カントの認識の構造論によれば、全ての人間は、主観に共通のメガネを備え、共通した認識に関する構造を有している。自然科学の基本的な部分については、わたしたちに先天的(ア・プリオリ)に備わった悟性で判断している。故に我々は科学法則に関する認識を客観的に共有できると回答している。

 

主客一致の問題を主観と客観を一致させるのではなく、主観同士を一致させることで見事に解決している。カントの発想の柔軟性、思考の深さは同じ人間の考えには思えないと感動した。

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