2000年前の古代ローマ帝国時代を生きた政治家にしてストア派の哲学者セネカ(紀元前1年頃〜紀元後65年)の書いた友人宛の書簡。これが「人生の短さについて」という哲学書です。
これを読むと、2000年前から人間は変わっていない、進歩していないのがよくわかります。
「人生は短くなどありません。与えられた時間の大半を私たちが無駄にしているのに過ぎないのです。」
「我々が実際に生きるのは人生のほんの一部に過ぎない。つまり、残りの部分は人生ではなく単なる時間というわけです。」
セネカの厳しい言葉が続きます。
「自分のお金を進んで分け与える者はいないが、人生の方は他人にそれも大勢にくれてやっている者ばかりです。」
「多忙な人間が何よりもなおざりにしているのが生きるという、最も学びがたい学問です。」
セネカは、他人に人生の大半を奪われた生き方をしていないか、それに気づいていないのではないかを厳しく問うています。
「わずかな人間しかたどりついたことのない年齢で人生をはじめようとは、死すべき運命を忘れた愚かな行為ではありませんか。」
そして、長生きする保証がどこのあるのか、残りわずかな人生になってようやく自分の人生を生きることに取り掛かるのでは手遅れだと言いたいようです。
私は早期退職する前にこのセネカの本を読んでいたわけではありませんが、自分の考えに近いものを感じました。私の場合、辞める際には「何故今辞めるのか。恵まれた収入や社会的地位を失うのはもったいない。」と何度も言われました。しかし、自分の人生の残り時間を考えると、他人のためではなく自分の人生を生きるためには50代で辞めるのがベストであると考え決断しました。
この本にはまだまだ学ぶところがありそうです。