50代早期退職者tudanumax の日記

50代で早期退職しようと考えた理由、心境など

正義とは何か

 

 

 

早期退職後に私が大学の聴講生として受講している前回の哲学の講義の中で「正義」に関する話しが出てきた。

 

古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスは、人が幸福に生きるためには一人一人の関係が対等であり、かつ人々の関係が公平に保たれていないといけないと指摘している。

 

そのためには、「正義」がなければならない。すなわち「正義」が幸福の条件である、「正義」なしには幸福は得られないという。

 

そして、アリストテレスは「正義」には3つの要素が必要だとしている。①ポリス()への貢献度に応じて富や名声が分配される「分配的正義」②平等な関係が損なわれた場合の権利回復としての「匡正的正義」③貨幣を介した公平な交換と相互扶助の原理としての「交換的正義」の三つ。

 

 

大学の授業では、今日の講義の感想を出すことになっている。私は次のような感想を書いて提出した。

 

現代社会においてアリストテレスが幸福追求の前提としている①分配的正義が果たして実現されているのかは問題になると思いました。行き過ぎた資本主義社会では、一部の能力や機会に恵まれた者に対し、貢献度を超えた富が集中しているように思います。そのような能力やアイデア等による貢献は尊重しなければなりませんが、たまたまその人が能力に恵まれていた面があることも否定できず、その一部を社会的共有財産として適正に配分する必要があるのではないかと思います。」

 

これは、たまたま読んでいた「ヨーロッパ思想入門」という本の中に出てくるジョン・ロールズ(19212002)という政治哲学者が「正義論」という著書で述べた考えを引用している。

 

ロールズの思想を少し長いが上記の本から拾って見る。

「正しい社会は、各人が自由に行動し、自分の選んだ目的を追求し、それを実現しうる社会でなければならないが、そうすると、人間には生まれつき能力差があるから(中略)職業や財産において格差が生まれてくる。(中略)社会主義社会の挫折から明らかなように、人間の自由を制限すれば、人々は活動への意欲を失い、社会は全体として疲弊する。」

 

「それではどうすればよいか。ロールズの配分の原理とはこの問題への対処である。すなわち、人々の自由な活動は社会的弱者の利益になるという条件下においてのみ、その存立を許容される。」

 

(中略)理由は、能力は個人のものではなく社会の共有財産であるという思想である。なぜ、そう考えるのか。能力は偶然に与えられたものである。自分はたまたま優れた能力を持っているが、乏しい能力の所有者であったとしても少しも不思議ではない。」

 

ロールズの理論においては、自分の存在は理由なき偶然であり、その能力を自分のためだけに利用する理由はないことになる。

 

私は、これまでこのような発想が全くなく、感銘を受けた考え方だった。

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