50代早期退職者tudanumax の日記

50代で早期退職しようと考えた理由、心境など

自由意志が認められるかNo.2インタープリターの存在から考える

 

 

 

自由意志が認められるかの2回目は、左脳のインタープリターという機能から考えて見ます。前回と同様に現段階の私の理解に基づいているので誤りがあるかも知れません。

 

脳の機能は、それぞれの箇所が並列的に機能していることが確認されています。そうすると脳機能がバラバラに機能していることになりますが、私たちは混乱を感じることはなく、脳は統一した活動をしていると考えています。それでは、人はなぜ統一感を持つことが可能なのか。これが左脳の機能であるインタープリターモジュール(解釈装置)というものが関係しています。

 

ここでインタープリターモジュールに関する興味深い実験を紹介します。重度のてんかん患者の治療の一環として脳の橋梁を切断した分離脳患者を対象者とした実験になります。通常、右脳と左脳はつながっているのですが、分離脳患者の場合、脳の橋梁が切断されたことにより、その連続性が絶たれることになります。

 

この分離脳患者の右視野にニワトリ、左視野に雪の絵を見せます。右視野を見る時には左脳が働き、左視野を見る時は右脳が働くことになります。右視野部分にニワトリの絵を一瞬見せて何か見えましたかと聞くと、患者は「ニワトリが見えました。」と答えます。右脳の働く左視野については、言語中枢の働く左脳とのつながりが保たれているからです。続いて左視野部分に雪の絵を一瞬見せて何か見えましたか尋ねると、患者は「何も見えませんでした。」と答えました。これは左視野からの情報は右脳しかアクセスできないところ、分離脳患者の場合、左右の脳の情報伝達が阻害されたことから、左脳の言語中枢は右脳に入ってきた情報にアクセスできないからです。

 

続いて、直前に見たものと関連がある絵を選ぶ実験を行いました。同じように、分離脳患者の右視野部分にニワトリ、左視野部分に雪の絵を見せます。続いて患者の左右の視野に一連の絵を見せて、前に見た絵と関連するものを選んでもらうことにします。そうすると、患者は、左手でショベルの絵を、右手でニワトリの足の絵を指差しました。

 

そして、それらの絵を選んだ理由を説明してもらいました。患者は、まず、ニワトリの足を選んだ理由について、「ニワトリが見えたから当たり前でしょう。」と答えました。ところがシャベルの絵を選んだ理由については「ニワトリ小屋を掃除するにはシャベルを使いますからね。」と答えたのです。本当は雪の絵があるので雪かきのためというべきところです。しかし、患者の言語中枢が働く左脳が認識できたのはニワトリの絵だけで、雪の絵は知らないので、別の理由を後付けで作り出したのです。

 

このように、左脳には、もっともらしい理由を後付けでつけて、自分で考えたかのようなストーリーを作り出すインタープリターという機能があることが分かっています。全ての活動は無意識のうちに行われ、後付けでその理由を左脳が生み出しているというわけです。

 

私たちは、一日中、このインタープリターを使って置かれた状況を把握し、外から入ってくる情報や自身の生理的反応を解釈して説明をつけています。そして、これにより自分の感覚や考えが統一感を持っていることに疑いを持たないのだと考えられるのです。

 

このインタープリターの機能は、当然ながら自由意志を否定する方向に傾くことになります。これが自己という幻影を与え、私たちは動作主体であり、自分の行動を自由に決定できると思い込んでいるのではないかというわけです。

 

このように脳神経科学の世界では自由意志を否定する決定論を後押しする研究結果が出ていますが、科学の元になる物理学の観点から考えると、更に問題が複雑になります。次回は物理学の観点からの議論を紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

 

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