今年はオリンピックイヤーだったが、全くと言っていいほどテレビを見なかった。
私はスポーツ観戦が好きでオリンピックを楽しみにしていたのだが、あるニュースがあってから、急に見る気がなくなってしまった。
それは、開催直前に、ある20歳未満のオリンピックの代表選手が、喫煙と飲酒をしたことが発覚したという理由で、代表を辞退したというニュースのことだ。
一部の識者からは厳しすぎる処分(なお、形は自主辞退であっても、実質的には処分だと思うので処分という言葉を使う。)という意見(否定派)もあったが、やむを得ないという意見(肯定派)の方が多数のように感じた。
肯定派は、規則違反、法律違反という理由なのだろう。しかし、法律的にいうと、そのような不利益処分は比例原則という法の一般原則に沿ったものでなければならない。比例原則というのは、当該処分が違反行為の程度に見合うものでなければならないというもの。
今回の違反行為は直接の被害者がいるわけでもない。なお法律で禁止されているのは20歳未満の人の健康を保護するという趣旨であり、違反しても当該本人に罰則規定がない。要はその程度の違反行為である。他方で選手が受けた不利益の程度は、その年齢でしかできないパフォーマンスがあるはずで、出場機会を奪われることで選手生命を奪いかねない重大なものである。
私からすれば、明らかに比例原則に違反しているとしか思えない。
完璧な人間などいるはずもないのに、まだ若い選手の些細なミスの揚げ足をとるようなやり方に感じた。そして、寛容性のない世の中の空気感につくづく嫌気がさした。何事もなかったかのように無邪気にオリンピックを応援する気には到底なれなかった。